私は自身の幼少期に、吃音に悩み、周囲の目や会話への恐れから逃れられない日々を過ごしました。今もその名残はあり、決して克服とは言えませんが、その経験が私の人生に与えてくれた気づきは少なくありません。
吃音は単なる話しづらさや言葉が出ないことを指すだけではありません。これには、多くの人が感じることのできないような早い思考と、それに追いつかない言語機能の狭間で生じる苦悩が隠されています。今日は、この吃音と頭の回転に関する「意外な話」について、少しお話ししたいと思います。
「吃音は頭が良い証拠?」メディアでの話題から考える
テレビ番組『ホンマでっか!?TV』をご覧になったことはありますか?明石家さんまさんが司会を務めるこの番組では、各分野の専門家が驚くような知見や新しい視点を披露します。その中で、脳科学者の澤口俊之先生が「滑舌が悪い人は実は頭の回転が速い」という見解を話されていました。これは、私にとって新しい発見であり、また心が軽くなる言葉でした。
澤口先生の理論は、脳の処理速度が速いと、舌や口の動きが追いつかず、話がスムーズに出てこないことがある、というものです。吃音をもつ方も「言葉がスムーズに出てこない」現象に悩むことが多いですが、果たして、澤口先生の「滑舌の悪さ」と「吃音」が同じ現象と言えるのか、興味深いところです。
ネットで見かける説も
実は、インターネット上でも「吃音を持つ人は頭の回転が速い」という話題を目にすることができます。多くは医学的・科学的に証明されていないものではありますが、時折、「吃音が頭脳の鋭さに関連している」という意見が見受けられます。もちろん確固たる証拠はありませんが、「吃音」という現象を持つことで、他の人とは異なる視点や考え方を持てる場合がある、ということには一理あるかもしれません。
「吃音=頭がいい」説の落とし穴
しかし、吃音が「頭が良い証拠」として捉えられるのは一面的な見方でもあります。吃音の原因は一人ひとり異なり、十人十色です。その中には、考えがまとまりきらずに話すことが困難なケースもあり、吃音が即「頭脳の高さ」を示すものではありません。しかし、私自身の体験として言えるのは、「吃音を持っていたことで独自の視点が養われた」ということです。自分の言葉が上手く出ないことに対しての悩みを持つことで、表現する力を意識的に高めようと努力するようになったり、人の話に耳を傾ける力を鍛えるようになったりしました。
幼少期に多い吃音と成長の相関性
吃音は、特に幼少期に表れることが多いと言われています。私の幼少期もまさにその通りでした。そして興味深いことに、「母乳で育てられた子供は吃音症が治りやすい」「母乳で育った子供はIQが高い」という研究もあるようです。これが直接的に「頭が良い=吃音が治りやすい」につながるかはわかりませんが、一つの要因として考えられるかもしれません。
こうした背景から「頭の回転が速い=吃音を持つ可能性がある」という説が生まれたとも言えます。もちろん、幼少期に吃音があった人が全員そうとは限りませんが、頭の良さが吃音の持つ性質に少なからず影響を与える可能性は否定できません。
吃音が教えてくれたこと
私自身の経験に照らして言えば、吃音は確かに悩みの種でもありましたが、それと同時に「考える力」や「違う視点で物事を捉える力」を育ててくれました。幼少期の頃、吃音があることで他人よりも自分の考えを言葉にすることが難しく、正直劣等感に苦しむ日々もありました。しかし、学業では周囲の仲間と切磋琢磨し、私なりの学び方で成績を保つこともできました。言葉がスムーズに出ないからこそ、少しゆっくりと他の人の考えに耳を傾けたり、誰かの意見を整理して受け入れる姿勢も自然と身についていきました。
もちろん、吃音は私の人生にとって単なるプラスだけではありません。社会に出た今、仕事の場面でコミュニケーションが難しいと感じることもありますし、劣等感に押しつぶされそうになることもあります。しかし、「吃音を持つことで得たもの」も、確かに存在するのです。
人生の幸せは「頭の回転の速さ」だけでは決まらない
吃音を抱える人の中には、頭の回転が速い人もいれば、そうでない人もいます。また、頭が良い人が必ずしも幸せな人生を送るとも限りません。人生は誰にとってもさまざまな要因が絡み合い、幸不幸は頭脳のよしあしだけでは決まらないものです。
吃音は確かに「特別」な体験かもしれません。けれど、それが幸せや不幸を決めるわけではありません。吃音を持っているからこそ得られる力、吃音だからこそ分かる視点を武器にして、今後も一緒に前向きに歩んでいければ、と思います。
最後に、吃音に悩む全ての方へ。人生は多様であり、吃音もその一部に過ぎません。吃音があっても、その人自身の価値や人生の可能性が決まるわけではありません。どうかご自身を信じて、周囲の人と歩み寄りながら、豊かな人生を共に築いていきましょう。