タイタニック号の沈没が悲しすぎてハッピーエンドを夢見てしまう
2021年5月14日、あの往年の名作、映画「タイタニック」がやっておりました。これは史実をもとにした悲しい物語。多数の犠牲を出した歴史に、見るに堪えない心苦しさがある反面、人間とは儚く、また死に際にどう生きるか、またその今際にあってどのような人間であったかを締めくくるが問われる場面でどう締めくくるのかが問われる壮大なテーマの作品です。
これを見ていた私が過ごしていた時は、高校3年生。
当時、やっぱり欧米の映画はすごいなぁと思いながらみていました。改めて23年たった今みても、色あせないクオリティ。つまりは23年の技術や感性の進歩を足止めさせていると思わされるほどの名作ということです。
何がすごいって、内容を知っているのに、「この先どうなるんだろう??」とハラハラドキドキさせる描写は、神の御業としか思えません。
それはいいとして、とにかく、この作品のアレは、
ハッピーエンディングに見えて、やっぱり悲壮感漂うバッドエンディングだということです。
死んだ後に、思い慕う相手に再会するというのは、壮大なハッピーエンドに思えますが、やはり現世ご利益を夢見る私のような小市民にとっては、これが報われなく、消化しきれない後味の悪さを憶えずにはいられないのです。
わかる、ジャックがあの世に旅立たないと、このストーリー全体が若者によるのろけ話で終わってしまうことは。
ただ、死んでほしくなかった、面白くはないかもしれないけれど、ぎりぎりであの最後の船体の瓦礫に二人一緒にしがみついて生きていてほしかったと思うのです。
(ちなみに、この最後のクライマックスの、船体の瓦礫にはヒロインのローズだけでなくジャックも乗れたのではないかという議論が人気のようですが、これは事前に、2人で乗ろうとしてひっくり返るシーンが描かれているので全然不自然ではないと思います。極寒の海の中、体は凍てつくので乗りあがる体力が出なかったともとれますし、また一回目に二人で乗ろうとした感覚的から、共倒れになると判断して自らは乗らないと判断したジャックの判断は正義のヒーローの自然です)
でもやっぱり二人とも助かってほしかった
この物語は、最期、おばあちゃんとなったヒロインのローズが老衰死し、天国でジャックに再会するという結末を迎えますが、これだと、
なんだかカタルシスを得ません。もやっとします。
ジャックと一緒に助かっていてほしかった。そのあと結婚とかするも夢と現実のギャップが大きく離婚とかする生々しいリアリティがあるかもしれませんが(船上で見知らぬ女性を口説けるだけの器量がある男性ですからひとつの家庭に収まらなくても何ら不思議ではありません)、それでも二人で生きていてほしかった。
そういう口惜しさがやはり、初めてみた高校三年生の青春時代から23年たった今でも、当時とかわらず思い抱く感情です。ジャック、最期目を覚ましてほしかったと。
この、悲しいパターンは、現代の物語にも引き継がれ、例えば昨今流行りました鬼滅の刃もまた、たくさんの愛すべきキャラがなくなって喪失感のオンパレードですが、転生して現代によみがえり、本人そのものではないけどニアイコールの存在によってロスを慰めて全体の調和をとるという構成です。
人間はどこかマゾヒスティックで、悲しい物語との対比で自分は幸せなんだという相対観でバランスを保っている、悲しく歪んだ生き物なのかもしれません。