こんにちは、INFP-Tの田中です。
先日、家族で大型ショッピングセンターに出かけたときのことです。
フードコートの匂いと人混みのざわめきの中を抜けると、視界の奥にネオンが瞬くゲームコーナーがありました。子どもたちの笑い声と電子音が入り混じり、その熱気に包まれているだけで、何だか自分も子ども時代に戻ったような気がしました。
小学5年生の息子が、目を輝かせて私の妻に言いました。
「ねえ、やってもいい!?」
普段は「また今度」と言われるところですが、その日は給料日後。妻の財布のひもも、少しだけ緩んでいました。
息子はUFOキャッチャーに一直線。景品棚には、ぬいぐるみ、キャラクターグッズ、そして息子の視線を一瞬で釘付けにしたもの――銀色に輝くピストル型のおもちゃ。
「パパ、これ欲しい!」
100円玉を渡すと、息子は慎重にアームを動かし、狙いを定めてボタンを押しました。しかし、アームの握力はまるで赤ちゃんのほっぺを撫でるように優しく、ただ景品をかすめてずらすだけ。
がっかりしていると、隣の同じ台に、一人の少年が現れました。年は中学生くらいでしょうか。迷いのない動きで操作し、見事にそのピストルを一発でゲット。まるでプロのような手際でした。
次の瞬間、その少年は私と息子に向かって、ふいにこう言ったのです。
「いる?」
私は一瞬、戸惑いました。
知らない子から物をもらうことへの警戒心。息子の前で軽々と好意を受け取っていいのかという迷い。そんな考えが頭を巡り、私は反射的にこう言ってしまいました。
「いや、大丈夫。ありがとう」
息子も「自分でとる!」と答えました。
少年は「あ、そう」とだけ言い、少し興味を失ったように見えました。しかし、その後も彼は同じ台でまた一発ゲット。そこでようやく気づきました――彼はこの台の“攻略法”を知っていて、ゲームを通して人と繋がることを楽しんでいるのだと。
「もらっておけばよかった」と心の中で思い直し、勇気を出して声をかけようとした瞬間、少年は別の台へ行ってしまいました。
私たちは再びUFOキャッチャーに挑戦。
100円、200円、300円…気がつけば500円。ピストルは微妙に位置を変えるだけで一向に掴み上げられる気配がない、息子の眉間にはシワが寄ります。
そこへ妻が戻ってきて、「もう帰るわよ!」と一喝。息子は泣きそうな顔で「お兄ちゃんからもらえばよかったのに…」とつぶやきました。
事情を話すと、妻は呆れたように言いました。
「どうしてもらわなかったの? そんなの100円渡してすぐもらえばよかったじゃない!」
その言葉が妙に胸に刺さりました。
確かに、私は昔からこうやって遠慮しすぎて、チャンスを逃してきた気がします。自分だけならまだしも、今回は息子にまで“遠慮の連鎖”を経験させてしまった。
家に帰ってからも、この出来事が頭から離れませんでした。あの少年の差し出したピストルは、単なる景品ではなく「もらう勇気」を試すテストだったのではないか――そんな気さえしてきました。
半年経った今、私はこの出来事を少し違う角度から見ています。
確かに私は、即断即決や貪欲さに欠けるかもしれません。でも、その慎重さや人を警戒する性格は、私の“個性”でもあるのです。小さな幸運をその場で受け取らない分、大きな運を引き寄せるチャンスが残っている――そんなふうに考えるようになりました。
もしかしたら、またどこかで、あの少年のように何かを差し出してくれる人に出会うかもしれません。そのとき、私は遠慮せずに笑って「ありがとう」と言える自分でいたいと思います。